紅時雨・中篇 -死色の蝶々-

紅時雨・中篇 -死色の蝶々-


作:九条顕彰


△はじめに…

こちらは声劇台本となっております。

この作品は著作権を放棄しておりません。

台本ご使用の際は、作品名・作者名・台本URLを分かるところに記載してください。

コピー・ペースト等での無断転載、自作発言、二次創作はおやめ下さい。


ネット上での生放送での声劇(ツイキャス等)のご使用に関しては自由です。

※YouTube等での録音した音声投稿(シチュエーションボイスや、ボイスドラマとしての音声投稿)や有償での発表(舞台での使用等)に関しては、作者の方に相談してください。

ネット上での上演の際、台本の使用報告はなしでも構いませんが、なにか一言あるととても励みになります。飛んで喜びます。


物語の内容にそっていれば、セリフアレンジ・アドリブは自由です。

ただし、大幅なセリフ改変・余計なアドリブを多く入れることはおやめ下さい。


この物語はフィクションです。

実在の人物・地名は一切関係ありません。


〇比率

♂:3,♀:2,不問:1


〇上演時間:約1時間


〇あらすじ

「俺がお前の『刀』になる」

人間と刀人(カタート)、1本の刀を巡って、それぞれの国が争い競い合う。


〇登場人物〇

・奥羽六花神国「オウウロッカシンコク」

六道「リクドウ」♂(侍) 35歳

政宗「マサムネ」♂(刀人) 17歳

時雨「シグレ」♀(姫) 16歳


・出雲大日峡国「イヅモダイニチキョウコク」

八尺瓊「ヤサカニ」♂(忍者)25歳

布都「フツ」♀(刀人)年齢不詳

水蛭子「ヒルコ」不問(暗殺者)年齢不詳



※不問キャラは男性セリフとして書いております。女性が演じられる際は言い回しを変えて大丈夫です。

※ただし、メモ等に移す際は記録の残らないところへお願い致します。無期限で記録の残る場所・またそのようなサイトへのコピーペーストでの投稿、また改変したものを自分名義でどこかへ投稿する、等という事は決してないようにお願い致します。



〇役表〇


六道:

政宗:

時雨:

八尺瓊:

布都:

水蛭子:




─本編セリフ─



時雨(M):幼い頃から、同じ夢を見る…。真っ暗な空を眺めていると、ふわっと、1匹の蝶々が飛んでくる…。見たことの無い、珍しい色の蝶々。白いような、黒いような、青いような、赤いような…。どこか恐ろしい、けど、美しい蝶の夢…。その夢が現実になるなんて…この時はまだ、思ってもなかった…。



政宗(タイトルコール):紅時雨(くれないしぐれ)・中篇(ちゅうへん)-死色(しいろ)の蝶々(ちょうちょう)-



————どこかの洞窟。暗闇の中、ぽちゃんと水滴が滴る音が静かに響き渡る。



布都:…〜っあああ!もー!遅い遅い!おそいっつーの!!ねぇヤサカニぃ!アイツってば、まだ来ないのかよお?!


八尺瓊:理解不(わからず)…。ま、あやつが約束の時間より遅れて来るのはいつもの事…。もう少し辛抱しろ、フツ。


布都:辛抱って、約束の時間からもう1時間も経ってるってのにぃ?!…はぁ〜あ、ほーんと相変わらずだよねぇ、アイツ…。大事な話があるからってアタシらに文(ふみ)を送ってきて、場所や時間まで指定してきたくせに、その時間も守れないなんてさぁ。


八尺瓊:喋不(はなさず)…。うるさいぞ…そんなに文句を言うな、フツ…。あやつが我らに助力を求めるなど、天地が返る程に珍しい事、余程の事態なのだろう…。少しの遅れは目を瞑ってやれ。


布都:はぁ?!すこし!?1時間の遅刻が、す・こ・し?!ふざけんなぁ!


八尺瓊:布都(フツ)。

(布都に睨みをきかせるように)


布都:…っ…。はぁ…アタシの『ご主人様』は、ホ〜ント、アイツには甘いくらいにお優しいんだから…。まあ、その優しさが同じくらい甘く残酷でアタシは好きなんだけどねぇ?


八尺瓊:優不(やさしからず)…。俺は別に、あやつに甘いわけでも優しい訳でもない。ただ、あやつを怒らせるのが面倒なだけだ。


布都:まあ確かに、1度怒らせたらヤバいもんねぇ…アイツは。頭痛が酷い時は特に、ね…。


八尺瓊:あぁ。あやつはある意味、目で人を殺せるからな…。あれは、命を命とも思っていない目だ。


布都:ふ~ん、命、ねぇ。ククッ、他人の命を弄んでるアタシ達が己の命の心配をするなんて、凄く滑稽だよねぇ…。出雲大日峡国(いずもだいにちきょうこく)のアタシ達みーんな、「生き損ないの寄せ集め」なのにねえ?


八尺瓊:…云不(いわず)…。それは禁句だぞ、フツ。掟は守れ。


布都:はいはいはぁーい、わかってるわよォ。


八尺瓊:ならば良い……ん?……来たな。


布都:え?…あー!!アンタ!いつまで待たせんのよ!遅スギィ!重役出勤にもほどがあるってえの!


八尺瓊:…はぁ…すまないな…。なにぶんフツは、体は大人でも、精神面が子供でな…。


布都:なんだとヤサカニィ!!?言わせておけばぁ!!!


八尺瓊:騒不(さわがず)…!…少し黙れ、フツ…。


布都:……ふんっ。


八尺瓊:それで、我々に話とは一体なんだと言うのだ……「ヒルコ」?


水蛭子:…ああ…久しぶりだな、ヤサカニ、フツ…。…はぁ…頭が痛いから、単刀直入に言う…。お前らに、「一時的に」代わって欲しい任務がある…。


布都:はあ?「一時的に」って、なんだそりゃあ?まさかアンタ、アタシ達を体(てい)のいい「捨て駒」にしようとしてるわけじゃないだろうねぇ?!


八尺瓊:焦不(あせらず)…。喧嘩は話を全て聞いてからにしろ、フツ。


布都:だってさぁ…。


水蛭子:…まあ、そう思われるのも仕方ないな。…あぁ、頭が痛い…。


八尺瓊:…何かあったのか?


水蛭子:…任務の最中に…ムラクモがやられた…。


八尺瓊・布都:!?


水蛭子:オレもグラムも、手傷を負った…。体力を回復する時間が欲しい…。その間、オレ達が幕府から請け負ってる任務を「一時的に」代わって欲しいんだ…。


布都:ふ~ん、なるほどねぇ…そういうことか。けど、まさかあの「出雲大日(いずもだいにち)の狂犬・ムラクモ」が「やられる」なんてねぇ…。


八尺瓊:まあ、皆から「狂犬」と忌み恐れられるあやつも、並みの人の子だった、ということだろう。…それで、ムラクモは誰にやられたのだ?


水蛭子:……。


八尺瓊:答えず、か…まあ良い…。その代わって欲しい任務とはなんだ?


布都:え!ヤサカニ?!何言って…。


八尺瓊:黙れ「布都」。


布都:っ…。


八尺瓊:それで、どのような任務だ?


水蛭子:…ある人間を、「殺して欲しい」んだ…。



───間、場所は移り、六道達が泊まっている宿屋…



時雨(ナレ):あの戦いから数日後…。リクドウさんの傷も完全に癒えて、私の父、「隻眼の影狼」が命を懸けて守ってきた妖刀「紅時雨(べにしぐれ)」の情報を、出雲大日峡国(いずもだいにちきょうこく)に売った下手人(げしゅにん)を追うために、私たち三人は幕府大国(ばくふたいこく)「江戸」へと向かって、旅をしていました。



———悪夢でうなされている時雨。



時雨:…ぅ…っ!!…はっ…はぁ、はぁ…ッ…また、あの夢…。


六道:…?どうした、シグレ?


時雨:あっ…!…り、リクドウさん…起きて、たんですか?


六道:ああ…ちょっと眠れなくてな…。それよりも、大丈夫か?


時雨:だ、大丈夫です…。なんでもない、ので…。


六道:なんでもないわけないだろう?こんな夜中に飛び起きて…顔色も悪いぞ?


時雨:…っ!……すみません…ちょっと、嫌な夢を見ちゃって…。


六道:…夢、か…。…俺も嫌な夢を見る事があるから、気持ちは分かる。


時雨:え…リクドウさんも?


六道:あぁ…。まあ…夢の内容は覚えてないんだが…。その夢を見ると、起きた時に…なんというか、生きた心地がしねぇんだ…。俺は思い出せないから上手く話せないが、話して楽になるなら、いくらでも聞くぞ?


時雨:……その…昔から、同じ夢を見るんです…。


六道:同じ夢…?


時雨:…見たことない、大きな白い月だけがぽっかりと浮かんでいる夜の野原の中を、私は一人で立っているんです…。空には星もなくて、周りにも何も無くて…。ただ、ずっと真っ暗で…どこまでも闇が広がっていて…。…その時、突然、私の目の前を1匹の蝶々が飛んで行くんです…。白いような、黒いような、青いような、赤いような、珍しい色の蝶々で…。私は導かれるようにして、その蝶々を追いかけていって…それで…。


六道:それで?


時雨:……いつの間にか暗闇の野原は消えていて…足元が、真っ赤な沼になっているんです…。その沼に足を絡め取られて、呑み込まれて…沈んで息が出来なくて…。もがいて、死にそうになって…。…そこでいつも目が覚めるんです。


六道:そうか…確かに怖い夢だな。…けど、ただの夢だ、気にするな。


時雨:そう、ですよね…すみません。


六道:別に謝ることじゃ無いさ。


時雨:は、はい…。


六道:…大丈夫だ、心配ない。


時雨:え?


六道:どんなに怖い夢を見たとしても、今は俺達がそばに居る。必ずお前を守る。だから安心しろ、いいな?


時雨:…!…は、はいっ。


六道:…ほら、横を見てみろ。


時雨:え?


政宗:がぁぁ、ぐごおぉぉ。むにゃむにゃ。(←いびきをかきながら気持ちよさそうに寝ている。)


六道:そこで、あほみたいにぐっすり寝てるやつの顔を。


時雨:…ぷっ、ふふふっ。


六道:あのあほ面を見てると、今まで見た怖い夢なんて、全部忘れちまうだろ?


時雨:ふふ、はい、そうですねっ。ありがとうございます。


六道:…やっと笑ったな。


時雨:え…。私、笑ってませんでしたか?


六道:いや、笑ってはいたけど…。お前の「本当の笑顔」は、初めて見たかもな。


時雨:あ…。


六道:とにかく江戸まではまだかかる。明日も早いから、しっかり寝とけ。


時雨:はい…おやすみなさい、リクドウさん。


六道:…おやすみ、時雨。



————間…。次の日。



政宗:ふぁぁぁ。う~ん、ねむう~。


六道:お前はあんだけ寝たのにまだ眠いのか。


政宗:いや、寝たけどさぁ、毎日早起きで寝足りねえんだもん。


時雨:すみません、私が急いで江戸に向かっているせいで…。


政宗:あっ!いいんだ、大丈夫!こんくらい平気だ!


六道:じゃあ、駄々こねたり、あくびしたりするなよ、あほ助。


政宗:あほ助ってなんだよ!


六道:もう少し発言を考えろって言ってんだよ、シグレのためを思うならな。


政宗:うっ…わ、わかってるよっ。あの、ごめんな、シグレ。


時雨:いえ、大丈夫ですよ、マサムネさん。…あの…リクドウさんは、昨日…寝れました?


六道:…大丈夫だ、ちゃんと寝たよ。


時雨:そうですか。


政宗:ん?リクドウ、昨日の夜、なんかあったのか?


六道:いや、何もない。


政宗:ふーん…。ていうか、ちょっと待て、リクドウっ!


六道:あ?


政宗:…こっち向け。


六道:なんだよ突然。


政宗:いいから!(グイっと六道の顔を両手で引っ張る。)


六道:ってえな!何す…。


政宗:お前…前より目のくま、酷くなってないか?


時雨:…え?


六道:…気のせいだ。


政宗:いや、絶対に気のせいじゃない!…なあ、リクドウ、どこか具合悪いのか?


六道:…悪くない、大丈夫だ。


政宗:ほんとかよ!?


六道:本当だ。嘘は言わねえよ。


政宗:…ならいいけど…。なんかあったときはちゃんと言えよ。俺たち、相棒だろ?


六道:ああ、ちゃんと伝えるよ。心配するな。


時雨:…リクドウさん…。



———その時、時雨の目の前を、夢に出てきた蝶が横切る。



時雨:…っ!…あの、蝶は…夢の中の…。


八尺瓊:忍法「闇帳(やみとばり)」


六道、政宗、時雨:!?!?



————あたりが真っ暗になる。太陽が透けて月のように見える。



時雨:!!…こ、これ、は…。あの…白い月は、まさか、太陽…?


政宗:な、なんだこりゃ!?なんで突然、あたりが真っ暗に…もう夜になったのか!?


六道:…違う、夜になったんじゃない。これは「幻術」だ。


政宗:げ、幻術?


八尺瓊:その通り。


時雨:!?


政宗:だ、誰だ!?



————闇の向こうから八尺瓊と布都が出てくる



八尺瓊:我は、出雲大日峡国(いずもだいにちきょうこく)・専属忍者、八尺瓊(やさかに)。


布都:同じく、出雲大日峡国・専属忍者、布都(ふつ)。


六道:やっぱり、出雲大日の奴らのお出ましか…。それも今回は、忍(しのび)ねぇ…。


政宗:くそ、なんでこんなところに出雲の奴らが!シグレ、俺たちの後ろにいろよ…シグレ?


時雨:…ここ、は…どうして…。


政宗:シグレ?どうした?…シグレ!


時雨:っ!!す、すみません、大丈夫です…。


政宗:本当か?…とりあえず、俺たちの後ろにいるんだぞ?


時雨:は、はい!


六道:…幻術で俺たちの心をかき乱して、戦闘不能にでもする気か、出雲の忍者ども。


八尺瓊:喋不(はなさず)。忍である自分たちの策を、敵である貴様らに話すはずがないだろう。


六道:ま、だろうな。忍者は口を割らず、か?


布都:まあ、策は教えてあげないけどさ、目的なら教えてあげてもいいよぉ?


政宗:目的?


時雨:…私の持ってる刀、ですか?


布都:はあ?「カタナ」?なんだそれ、そんなの知らないよ~。


八尺瓊:喋不(はなさず)。お前は本当にお喋りだな、フツ。…まあいい、我々の目的は貴様ら「全員」を殺すこと、だ。


時雨:え!?


政宗:なっ!?


六道:…つまり、あの「ヒルコ」ってガキとは違う目的ってことか。


時雨:わ、私たちを…殺すって…。


布都:そのまんまの意味だよ~。お前らにはここで死んでもらう。この「闇帳(やみとばり)」の中でね!


政宗:やみとばり?


八尺瓊:忍法「闇帳」。この忍法は幻術でもあるが、ある種の「結界」でもある。この中で起こることは、周りには見えず、聞こえず。また、貴様らもここから出ることはできない。


政宗:なに!?


時雨:ここ、から…出られない…!?


六道:…なるほどな…。じゃあ、俺たちがここでお前らを殺しても、周りには何も見えないし、聞こえないってことだな?


布都:は?アタシらを殺す?何言っちゃってんのアンタ?


八尺瓊:嗤不(わらえず)。我々を殺すということは、すなわち幕府を敵に回すということ。そうなれば貴様らは幕府から追われる身となる。まあ、ここで殺される貴様らには関係ない、か。…それとも貴様はそうなってもよいということか?奥羽六花神国(おううろっかしんこく)、最恐(さいきょう)と謳われた殺し屋、「千人斬りの六道(リクドウ)殿」?


六道:…っ!!


時雨:えっ!?


政宗:アンタ、何言ってんだ!!リクドウが殺し屋なわけねえだろ!!


八尺瓊:ほほう、小僧、お前は知らないのか?この男の本性を、過去を。おぬしはこの男の「カタナ」なのだろう、刀人(カタート)の小僧よ。


政宗:…っ!


時雨:…り、リクドウさん、マサムネさん。


六道:…マサムネ…俺は、


政宗:っ、俺は!!リクドウの本性だとか、過去だとか、そんなのは知らねえ!というか関係ねえ!!…俺がリクドウのことで言えることがあるなら、ただ一つ…リクドウは俺の大切な相棒、それだけだ!!ガキだと思われたって構わねえ!お前らが俺のことを悪く言おうがなんと言おうが別にいい…けど!!俺の相棒を悪く言うやつは、絶対許さねえ!!!!


六道:…っ!


政宗:それに、シグレに手を出すことも許さねえ!!シグレは俺たちが守る!!…だろ、リクドウ!!


時雨:っ!マサムネさん…。


六道:…ああ、そうだ…そうだな、マサムネ。たとえ幕府を敵に回そうとも、俺は、俺たちは、シグレを守る…!!


政宗:ははっ、やっぱアンタはそうでなくちゃな!リクドウ!!


時雨:リクドウさんっ…!


布都:…ぷっ…ふは!ふはははは!!こいつらバカだねぇ、ヤサカニぃ!こんなバカな奴ら、さっさと殺っちゃおうよ!!


八尺瓊:禁得不(きんじえず)。まったく、失笑を禁じ得ないな。では、容赦なく行かせてもらおう…『解き放て、フツ・「形式・鎖鎌」。』


布都:ふは!委細承知(いさいしょうち)…!


政宗:来るぞ、リクドウ!!


六道:ああ、わかってる、行くぞ…『花開け・霹靂閃華(へきれきせんか)、政宗』!!



———政宗、布都、刀人(カタート)に変身。



布都:「ふはっ!さあ、アタシの七変化、見せてやるよ!」


政宗:「さて…オレの一閃(いっせん)においつけるかな?」


六道:…そいつは変化刀(へんげとう)の刀人(カタート)か。どの武器にも変化できるという刀人が稀にいると聞いたことはあったが、実際にみたのは初めてだな。


八尺瓊:存在得不(そんざいしえず)…。変化刀は我ら出雲大日峡国(いずもだいにちきょうこく)にしか誕生せぬ宝刀だ。他の国では絶対に誕生しえない刀人(カタート)だ。


政宗:「…リクドウ、あの忍者と刀人、相当やべえぞ。」


六道:ああ、わかってる。


時雨:…リクドウさん、マサムネさん…どうか死なないで…。


八尺瓊:そちらから動かないなら、こちらから行くぞ…。布都!!


布都:「あ~いよっ!!いくぜえええ、ヤサカニ!!」


八尺瓊:鎖鎌奥義・「美水斬(みずきり)」!!



———鎖鎌の刀身から水がほとばしり鎌状の形になって飛んでくる、六道、避ける。



政宗:「っ、あいつ、水の属性か!!」


六道:っと…水か。ならこっちも行くぞ!「霹靂雷電(へきれきらいでん)」!!



———刀身から電流を放出させる。電流をまともに受ける。



八尺瓊:ふん…雷(いかづち)、か…。


布都:「くっ…。ちょっとやばいねえ、ヤサカニ」


八尺瓊:恐不(おそれず)…。さすがといったところか、「千人斬りの六道(リクドウ)」


六道:それはもう捨てた名前だ…。今は「ただのリクドウ」だよ、くそ忍者。


八尺瓊:くそ忍者にあらず…。俺の名は「八尺瓊(やさかに)」だ。


六道:どうでもいいさ…。どうせお前はここで死ぬんだからな!


八尺瓊:その言葉、そのまま返そう。貴様の持つカタナの刀身が、俺に届くことはない。なぜなら、貴様らは弱いからだ。


六道:ふっ…これはまた、なめられたもんだなぁぁ!!



———六道、八尺瓊に向かって突っ込む。



八尺瓊:布都、「形式・忍者刀(にんじゃとう)」!


布都:「承知!!」



———布都、忍者刀に変化する



六道:!!


政宗:「あの刀人(カタート)、また変化しやがった!!リクドウ、気を抜くなよ!」


六道:わかってる!行くぞ、政宗!


政宗:「おう!!合点承知!!」


六道:「霹靂雷電(へきれきらいでん)」!!


八尺瓊:…忍者刀・奥義「炎王鬼灯(えんおうほおずき)」!!



———短い忍者刀の刀身から巨大な炎の玉が放出される。



六道:なっ!?


政宗:「でかい…火球(かきゅう)!?まずい!よけろリクドウ!!」


六道:くっ!くそ、この距離は…避けられ…ッ!


政宗:「リクドウーっ!!!」



———火球が六道たちに当たり、爆発音がする。



八尺瓊:…やったか。


時雨:リクドウさん、マサムネさんっ!!


六道:…なっ…!?


政宗:…ッ…。



———政宗、変化を解除して六道をかばう。左腕を負傷。



時雨:っ!!


六道:…っ…マサ、ムネ…。


政宗:…っ…なに、やってんだよ、この、馬鹿、リクドウ…。



———政宗、倒れる。



六道:っ!マサムネえぇぇぇぇ!!おい、マサムネ!!しっかりしろ!!


政宗:…くっ…うるせぇ、聞こえてる…。だい、じょぶだ…。こんなもん、かすり傷だ…。ただ、左腕を…ちょっと、やけどしちまった、けど…。


六道:…すまん、マサムネ…。


政宗:なん、だよ…らしくねぇな…。謝んなよ…。俺はあんたの相棒だ、守るのは当たり前だろ…。


六道:…っ…この、馬鹿が…。無茶しやがって…。


政宗:ははっ…馬鹿とは、なんだよ…ひでえな…。というか、馬鹿はお前だ…ッ…。こんな時までアンタは、礼の一つも言えないのかよ…。


六道:…お前に礼を言うのは、この闘いに勝ってからだ…。少し休んでろ、マサムネ…。


政宗:…あぁ…すまねぇ…。


時雨:リ、リクドウさん!マサムネさんは…!?


六道:…腕のやけどの方は大したことない…。ただ…しっかり冷やさねえと、痕(あと)になっちまうな…。シグレ、マサムネのそばについてやっててくれ。


時雨:は、はい、わかりましたっ…。けど、リクドウさんは?


六道:…あいつらとの決着(けり)をつける…。


時雨:え!?でも、マサムネさんは今、やけどを…。


六道:心配しなくても大丈夫だ…。


時雨:リクドウさんっ…。


六道:シグレ、マサムネを連れて下がってろ。


時雨:っ!!わ、わかりました…。


八尺瓊:…中不(あたらず)、か。とはいえ、リクドウは今や丸腰も同然。布都(フツ)、奴のとどめを刺すぞ。


布都:「あ~いよっ!さっさとリクドウって奴をぶっ殺して、あとの二人はそれからゆ~っくりと、なぶり殺しにしようよ、ヤサカニ♪」


八尺瓊:同意せず…。と、言いたいが、今回は布都の意見に同意しよう。我々は忍者。卑怯卑劣極まりなくて当然だ。


布都:「ふはははは!!やったあ!!さすがアタシの「ご主人様ぁ」!!」


六道:…ほんと、良く喋る忍者どもだな…。…その変化刀…形式で属性が変わるのか…。


八尺瓊:云不(いわず)。先ほど技を披露したから言わずともわかるというもの。フツは変化する武器によってその属性も「変化」する。


六道:そうか…なるほどな…。それが分かっただけで十分だ。


八尺瓊:ふん、随分と余裕だな。貴様の刀人(カタート)は負傷しもはや使えぬ。負けを認めろ。


六道:まだ負けてねえよ…。お前ら…俺のカタナを…。否(いな)…俺の大切な相棒を、よくも傷つけてくれたな…。


八尺瓊:(…!?なんだ、この男…ものすごい殺気だ…それに…。隙が見えない…。これが「千人斬りの六道」、か…。)


布都:「はぁ!?たかがカタナを傷つけたくらいでなんだっていうんだよ!アンタだってわかってんだろ、刀人(カタート)はいわば消耗品も同じ…。たとえ壊れても代わりのカタナを探すだけ…。カタナ一本傷つけられたくらいで、ぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃないよ!!」


六道:マサムネはただの「カタナ」じゃねえ…こいつは人を斬るための「道具」じゃねえ…!俺の大切な相棒で、一人の「人間」だ…!!!刀人(カタート)だって、ちゃんと生きているんだ…!血も通っている、感情も、心も、命も魂もある!!れっきとした、まごうことなき「人間」なんだ!!!だから、こいつの代わりはどこを探しても、絶対にいねえんだよ!!!


政宗:!…リ、リクドウっ…!


布都:「…っ…!!」


六道:…さあ来いよ、くそ忍者ども。たとえ俺が死んだとしても…首だけになっても、絶対に二人を守る…!


八尺瓊:…布都「形式・妖刀」。


布都:「えっ!?…けど、それはッ!」


八尺瓊:云不(いわず)!!…黙って従え、フツ。


布都:「…くそっ…!どうなっても知らないからな!!」



———布都、妖刀・村正に変化する。



八尺瓊:…変化刀・布都、最終変化…「妖刀・村正」…。


時雨:なっ…妖刀、村正…!?確か、父が持っていた「妖刀・紅時雨(べにしぐれ)」と並ぶ…とても強力で危険な妖刀…。けど村正は、「刀狩令」の際、幕府に没収されたはず…!


布都:「その幕府が、変化刀のアタシに許可したんだよ。「村正の力のすべて」を、「アタシの力」に加えることをね!」


政宗:ち、力に、加えるだとっ…?


八尺瓊:これが、布都(フツ)のもう一つの能力だ。布都が触れた武器の属性、能力、形状まですべてを「模倣(もほう)」し、その武器と同等の力を自分のものにすることができる…。


時雨:そ、そんな…。それじゃあ、今までのあの力は全部…。


布都:「そうさ!アタシがいろんな刀人(カタート)や名刀と呼ばれるものに触れて、殺して奪った力だ!ひゃははは!!この妖刀・村正の力、見せてやるよ!!」


政宗:あの、刀人(カタート)…かなり、狂ってやがるぜ…。


八尺瓊:…ふふふ…この妖刀…やはり素晴らしいな…。手に持つと力が漲る(みなぎる)…。早くこの刀身に、貴様の血を吸わせたい…。さあ、貴様は何と言って死ぬのかな?


六道:誰が死ぬかよ…。…お前らは俺を本気で怒らせた…。丸腰だと思って甘く見てるんじゃねえぞ…。来いよ、八つ裂きにしてやる。



————その頃、近くで様子をうかがっている水蛭子。



水蛭子:…はぁ…あいつら…死ぬな…。あぁ、頭が痛い…。


八尺瓊:いくぞ、フツ!!


布都:「ああ!遠慮なく散らしてやれぇ!!」



———八尺瓊、六道に向かっていく。刀身に黒い炎がおびる。



八尺瓊:妖刀・村正奥義「闇烏(ヤミカラス)・鏡花水月(きょうかすいげつ)」!!


六道:…。


時雨:(この状況…やっぱり丸腰のリクドウさんの方が不利だ…どうしたらっ…!)



———その時、時雨の目の前を夢に出てきた蝶が通り過ぎる。



時雨:っ!また、あの蝶…。


八尺瓊:さあ死んでもらおうか、千人斬りの六道!!


六道:…その名は捨てたと…いっただろうがぁ!!!


八尺瓊:はは!貴様の方から突っ込んでくるか!!ついに負けを認めたか、リクドウ!!


六道:ほざけ!!負けるのはてめえだぁ!!その妖刀、折らせてもらう!!


時雨:リ、リクドウさん!!



———八尺瓊、六道、互いにすれ違う。ガキンッという鈍い音がする。布都が折れる。



時雨:あっ!!


布都:「ッ…ぐぁあああっ…!!!」


八尺瓊:なっ、何!?


六道:…だから、いったろ…。



———布都、変化が解かれる。腹部を斬られ負傷。



布都:うぐぅ…。は、腹がぁぁぁっ…!


八尺瓊:フツ!!!


六道:そのカタナ…「折る」ってな…。


八尺瓊:き、貴様ぁっ!!


時雨:…!?



————六道の左腕が刀になっている。



政宗:リク、ドウ…。


時雨:…リクドウさん、その腕は…。


六道:…秘剣・鬼丸国綱(おにまるくにつな)奥義「黄泉平坂(よもつひらさか)」。


八尺瓊:…ついに本性を現したか。


時雨:リクドウさん…そ、それは…いったい…。


六道:…俺の体は、半分、刀人(カタート)なんだ。


時雨:なっ!?


政宗:半分、刀人って、どういうことだっ…!?


八尺瓊:それが殺し屋、「千人斬りの六道」の本性…。ただの人間にも、刀人(カタート)にも成り切れぬ、半端モノの存在。


時雨:どうして…そのような体に…。


六道:…俺は…生まれた時はまだ「普通の人間」だった。…刀人の力は、突然変異の先天性能力なのは知ってるよな。…子供の頃、転んで、石で頭を切る大怪我をした際に、血が足らなくなって死にかけていた所を、刀人の友達に血を分けてもらい、助かったんだ。…その時に俺は、この能力を手に入れた。俺は、後天性の刀人なんだ。


時雨:後天性の、刀人…。


政宗:リクドウ…そんな、大事なこと、なんで俺に教えてくれなかったんだよ。


六道:教えなかったんじゃない、知られたくなかった…。お前が…マサムネが大切だからこそ、知られたくなかった。…お前に、気を遣わせたくなかった…。こいつを使うと、時々、我を忘れてしまう。俺が俺じゃなくなるみたいにな…。だから…伝えるのが怖かった…。俺にはお前が必要だから。


政宗:…っ!リクドウ…。


六道:それに、できればもうこの力を使いたくなかったんだ。これは本来、他人の力。…それに俺は、この力を使って、殺し屋をしていた。そこの忍者がいっていたように…。


時雨:リクドウさん…。


六道:けど、それはもう過去のこと。今はただの、「雇われ用心棒の六道」だ。…俺はもう、昔の俺じゃねぇ!!


八尺瓊:頷不(うなずかず)。たとえ「今」がそうでなくとも、貴様の過去は、やってきたことは二度と変えられぬ。


六道:っ…!それ、は…。


政宗:…ッ…リクドウっ!!


六道:!!


政宗:そんな奴の言葉に耳を貸すんじゃねえ!俺はさっき言ったはずだっ、アンタの過去は関係ねえ!俺は今のあんただからそばにいるんだ!俺を地獄から救ってくれたあんただから、あんたの力になりたいんだ!だから俺の言葉だけを聞け!!あんたは俺のたった一人の相棒だ!!


六道:!!…ああ、そうだな。お前は俺の最高の相棒だ、マサムネ。


時雨:リクドウさん。


政宗:へへっ…。おい、リクドウ!


六道:ん?


政宗:これが終わったら、いろいろ、ちゃんと話してもらうからなっ…痛っ…!


時雨:マサムネさんっ、無理しないで…。


六道:…ああ、わかった。きちんと話すよ。今は休んどけ、マサムネ。…シグレ、頼んだぞ。


時雨:は、はい!


布都:ぐっ…ヤサ、カニ…。


八尺瓊:…布都…まだ戦えるか?


布都:…ッ…ちょっと、無理っぽい…かも…。


八尺瓊:…そうか…。ならここで死ぬか、刀に変化して死ぬか、選べ。


布都:…は?なに、いって…んだよ…。無理って、言ってんだろ…。こ、のひとで、なし…。


八尺瓊:持不(もたず)。忍びはただ生きて死ぬだけのもの。感情も心もいらぬものだ。


布都:…くっ…。アタシ、は…。


八尺瓊:選べぬ、か…ならば、そこにいろ。


六道:ふん、随分と酷い「ご主人様」だな。


八尺瓊:俺は忍び。使えぬ武器はいらぬ。まずはそこの女から殺す。


布都:…ッ…ヤサカニ…。


水蛭子:もういい、面倒だ。お前らは「クビ」だ。


八尺瓊・布都:!?



————八尺瓊、布都、水蛭子に切り殺される。闇帳が解除される。



八尺瓊:ぐはぁ!?


布都:うぐぅ!!



————八尺瓊、倒れる、二人ここで絶命。



六道:なっ!?


政宗:アイツ…!!


時雨:…あ、なたは…。


水蛭子:…久しぶりだな、リクドウ殿、刀人(カタート)のガキ。そしてお姫様。


六道:ヒルコ…!お前、一体何を…。なぜ仲間を…。


水蛭子:…はじめは…こいつらを使って、お前らを弱らせようと思っていた。…が…俺の任務で大事な「お姫様」を殺そうとしていたからな…。それと、お上(おかみ)からの命令で、こいつらはもはや不要とお達しがあった。俺としては不本意だが、お上の命令で殺しに来た。…こいつらは少々、しゃべりすぎるからな…。あぁ、頭が痛い…。


政宗:仲間、なのに…なんて奴だ…。


水蛭子:…それにしても…。アンタ、できそこないの刀人(カタート)だったのか、リクドウ殿?


六道:っ…。


政宗:おい、てめぇっ、リクドウのこと、悪く言うな!…痛っ…。


水蛭子:ふん…手負いのガキが、強がってんじゃねえよ…。


政宗:く、そぉ…っ…。


六道:…それだけか…?


水蛭子:…ん?


六道:仲間を殺して、俺たちに悪態をついて、そんなことをするために来たのかって聞いてんだよっ!


水蛭子:…まあ、それだけじゃないんだが…な!!!



———水蛭子、素早い動きで、時雨を攫う



時雨:っ!!きゃあぁあっ!!


六道:なっ!!


政宗:っ!!シグレェェェ!!くそおおおお!!!


水蛭子:…この姫様も、ついでにもらって行く。


時雨:は、放してっ!!放してください!!


水蛭子:…はぁ、うるさい。



————水蛭子、時雨のみぞおちを殴り気絶させる。



時雨:うっ…!


六道:!!シグレ!!


政宗:…っ…おいてめぇ!!シグレに乱暴なことするな!!


水蛭子:ふん、うるさいから黙ってもらっただけのこと。…そうだな、お前らにひとつ、希望ってやつをやろうか。


六道:…希望?


水蛭子:この姫様はもらっていく…。…俺たちとの決着をつけたければ…いや、この姫様を助けたければ、奥羽六花神国(おううろっかしんこく)、神山(しんざん)・須弥山(しゅみせん)の山頂…。刀狩令(かたながりれい)で集めた刀で作った巨大大仏「刀剣大仏(とうけんだいぶつ)」のある寺、「最獲寺(さいかくじ)」にて、お前らを待つ。


六道:!!


政宗:さい、かくじ…?


水蛭子:…必ず来い…。待っているぞ…。



————水蛭子、時雨を連れて消える。



政宗:なっ…ま、まてっ…!くそっ!


六道:…最獲寺(さいかくじ)…。「刀の墓場」と呼ばれているあの寺に、何があるっていうんだ…。ってそんなことは後回しだっ。



———六道、左腕の変化を解除する。政宗に駆け寄る。



六道:おい、マサムネっ!


政宗:っ…リクドウ…。俺…。


六道:マサムネ、医者に行こう。たてるか?


政宗:俺、シグレを…。


六道:…馬鹿、お前はしっかり守ってただろうが。俺の失態だ、俺が油断したから…。俺だってシグレをすぐにでも取り返したいが、まずはお前のけがの治癒が先だ。


政宗:け、けど…!すぐにでも追わないと、シグレが…痛っ!!


六道:無理するな!焦って追って、お前の傷が悪化したら…俺はお前も守りたいんだ。それに…俺たち二人でシグレを守るんだろ?


政宗:!!…あぁ、そうだ、俺たち二人で守るんだ、助けるんだ!


六道:だったら、まずはお前の傷の治癒が先だ。治ったらすぐに追うぞ、マサムネ!


政宗:あぁ!


六道:この近くに、医者がいればいいが…立てるか?


政宗:…っ…ちょっと、無理かも…。リクドウ、手を貸してくれ。


六道:ああ、行くぞっ。



————六道、政宗に肩を貸し、一緒に歩く。



六道:…マサムネ…。


政宗:ん?なんだ?


六道:…ありがとうな、マサムネ。


政宗:…!…へへっ、いいってことよ!


六道:(…シグレ。俺達が行くまで、無事でいてくれよ。)



———その頃、須弥山・山頂、最獲寺にて。



時雨:…っ…ここ、は…?


水蛭子:気が付いたか…お姫様。


時雨:っ!!あなたはっ!!


水蛭子:はぁ…。うるさい…。もう少し静かにできねえのか…あぁ、頭が痛い…。


時雨:…ッ…ここは、どこ?ほかの二人は…?


水蛭子:グラムとムラクモか?あいつらは所用で今はいない…。それとここは、須弥山・山頂の最獲寺(さいかくじ)だ。


時雨:須弥山の最獲寺!?どうして、ここにっ…!


水蛭子:…お姫様の「本当の力」を「覚醒」させるためには、ここの寺の力が必要だからな…。わかってるんだろ?


時雨:…っ!…私の中に封印されてる「紅時雨(べにしぐれ)」を、「解放」させるため…ですか?


水蛭子:ご明察。



———水蛭子、指を鳴らす。すると時雨の座っている床が、紅く光り、血の池のようになる。



時雨:っ!?


水蛭子:封印・解除術「紅渚(くれないなぎさ)」


時雨:っ!!床が、沼になって…!?い、いやああ!!


水蛭子:この液体は、お前の力、紅時雨(べにしぐれ)を解放する術だ。


時雨:そ、んな…!…ぅぷっ、お、溺れるっ、足が、からめとられ…た、助けっ…!


水蛭子:…さあ、解放しろ…。素直にその術に身を任せ…そして、「俺たちの仲間になれ」…時雨姫(しぐれひめ)。


時雨:い、いやっ、いやあああっ…!!


水蛭子:…心も体もすべて、その力に身を任せて…「解放せよ」。


時雨:…っ!!…ぁふっ…うぐっ…っ…。



———時雨、紅い水の中にゆっくりと沈む。



水蛭子:…術に堕ちた…な。おやすみ、お姫様。…さて、力の解放まで何時間かかるか…。さあ、来いよ、六道、政宗…。まあ、お前らが来る頃には、時雨はお前らの知ってる時雨じゃない。その時にはもう「精神的」に死んじまってるからなぁ…。ふひひ…ははは…あははははははは!!!



政宗(M):次回、『紅時雨(くれないしぐれ)・後篇(こうへん)・最終章‐紅い雨・百花繚乱‐』。死を分かつまで、魂は共にあり。



ー終わりー



九条 顕彰・台本置き場

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